<1>では、レッド・ガーランドの美しいイントロに続いて、マイルスの絶妙なミュート・ソロが聴こえる。「卵の殻の上を歩くプレイ」と形容された、マイルス特有のデリケートな演奏だ。ハーモン・ミュートを効果的に使った演奏は、マイルスがバラードの名人であることをいや応なく印象づける。50年代のマイルスを代表するオリジナル<2>は、一転して力強く演奏されている。
デイヴ・ブルーベックの人気曲<3>は、再びミュート・プレイが冴える。マイルスのリズム隊は、鉄壁を誇った往年のベイシー楽団のリズム・セクションにならって、オール・アメリカン・リズム・セクションと呼ばれた。<6>はマイルスとコルトレーンが抜け、そのオール・アメリカン・リズム・セクションによるトリオ演奏である。
マイルスのマラソン・セッションは、1回目が56年5月で2回目が同年10月。その5か月の間に急成長したのが、当時伸びざかりだったジョン・コルトレーン。本作の録音は5月が中心で、<7>だけが10月に録音されたため、<7>ではコルトレーンの急成長ぶりをしっかりと確認できる。(市川正二)
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